令和3年度 公害防止管理者 水質概論 問8

問題

富栄養化した湖沼の水質に関する記述として,誤っているものはどれか。

⑴ 光合成によって二酸化炭素が消費されると,pHは低下する。
⑵ 表層に近い好気的な環境の下では,植物プランクトンの死骸などは微生物によって分解・無機化していく。
⑶ 水域が成層すると,表層から酸素が深層に供給されにくくなる。
⑷ 貧酸素化した底質で行われる嫌気分解は,好気分解に比べ効率が悪いので,完全に無機化されない懸濁態有機物が蓄積されやすい。
⑸ 底質が長期にわたり貧酸素状態となると,鉄やマンガンのイオン態の溶出,脱窒による窒素ガスの発生などが起こりやすくなる。

正解

(1)

解説

(1)

光合成の反応式は次の通り。
6CO2 + 6H2O → C6H12O6 + 6O2

また、光合成を行うには水中のCO2だけでは足りないためHCO3も消費されます。
そしてCO2、HCO3などは水中で以下の平衡が成り立っています。
CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ HCO3 + H+ ⇄ CO32- + 2H+

よって光合成によりCO2やHCO3が消費されるとこの平衡を保つために水素イオンが消費が進む、つまりpHは上昇するので誤り。

(2)

記載の通り、好気的な環境の下では,植物プランクトンの死骸などは微生物によって分解・無機化していきます。 好気条件での有機物の分解は酸化分解で、CO2、水、NO3、PO43-などに回帰します。
これらは混合によって表層に供給されると、再び植物プランクトンによって利用され有機物合成に使われます。

(3)

成層とは水、空気、その他の物質が層を成し、混ざり合わず、層状に分かれている状態を言います。水域が成層すると,表層と深層とで水の混合がほとんど起こらなくなるため、表層から酸素が深層に供給されにくくなります。
よって正しい。

(4)

嫌気分解は,好気分解に比べ効率が悪いです。なので表層から大量に有機物が供給された場合(=富栄養化が進んだ状態下の場合)、底質に完全に無機化されない懸濁態有機物が蓄積(=ヘドロの形成)されます。
よって正しい。

(5)

底質が長期にわたり貧酸素状態となると,底質の中で安定していた物質が還元されます。
底質には鉄やマンガンの塩が含まれていますが、それらが還元され、鉄やマンガンのイオン態として溶出します。
また、硝酸塩は亜硝酸塩(NO2)へ還元され、そしてNOやN2Oとなり最終的にはN2ガスへと還元されていきます。この過程を脱窒と呼び、嫌気的な条件で起こります。
よって正しい。

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