令和2年度 公害防止管理者 水質概論 問9

問題

金属の毒性に関する記述として,誤っているものはどれか。
⑴ 同じ金属でも化学種によって毒性が異なることが多い。
⑵ 暴露経路によって毒性の発現が異なることが多い。
⑶ 一時に多量暴露した場合でも,少量ずつ長期間暴露した場合でも,総暴露量 が同じであれば毒性の程度は同じである。
⑷ 複数の金属による複合汚染では,それぞれの毒性が弱められることもある。
⑸ メタロチオネインが生合成されると,重金属に対し解毒作用を及ぼす。

正解

解説

頻出問題です。

(1)

例えば、

  • 無機水銀代表:塩化水銀(Ⅱ)
    1. 腎障害、軽度の肝障害
    2. 血液 – 脳関門を通過しないため脳中への蓄積はわずか
  • 有機水銀代表:メチル水銀
    1. 特異的な脳神経障害
    2. 血液 – 脳関門を容易に通過し脳内に蓄積する

同じ水銀化合物でも、化学種により中毒の相違がある。
このように、化学種の相違により臓器内の濃度分布に変化を与えたり、また、濃度に関係なく特異的な作用を与える場合があり、正しい。

⑵ 暴露経路によって毒性の発現が異なることが多い。

例えば、

✔︎金属水銀が経口摂取 → 消化管からの吸収はほとんどなく毒性が軽微
✔︎水銀蒸気として経気道暴露 → 体内によく吸収され、非常に強い毒性が現れる

上記のように、生体影響としての毒性を考えるには、侵入(暴露)経路について考察する必要があり、正しい。

(3)

総金属暴露量が同一量であっても,一時に多量暴露した場合と,少量ずつ長期間の暴露の場合とでは毒性の程度は異なる。まず少量ずつの場合は、吸収量と排泄量のバランスが取れている間は障害を受けることがない。また、バランスが取れていない場合は一時に大量暴露した場合は急性毒性、少量ずつ長期間の暴露の場合は慢性毒性となる。よって誤り。

(4)

毒性が弱められるケースとして、例えば以下がある。
・無機水銀中毒 – セレン
・カドミウム中毒 – 亜鉛

また、拮抗作用として以下も知られている。
・マンガン – 鉄
・モリブテン –

よって正しい。

⑸ 

メタロチオネイン(MT)は、カドミウムや水銀などの金属によって肝臓などで誘導生合成される。

例えばカドミウムに暴露した場合、すみやかにMTが生成され、カドミウムはCd-MTとして捕捉される=安定な状態となり解毒的作用を受ける。よって正しい。

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